2,021.10.16.(土)
書道 無形文化財に
新制度で初 文化審が答申「伝統的酒造り」も
2021.10.16.(土)毎日新聞 (26頁より)
文化審議会は15日、「書道」と「伝統的酒造り」を
登録無形文化財にするよう末松信介文部科学相に
答申した。6月施行の改正文化財保護法で無形文化財にも、
既存の指定制度より基準が穏やかな登録制度が設けられ、
初の登録となる。
技術継承に取り組む保存団体には、それぞれ「日本書道文化協会」(東京都港区)と「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」(同)を認定する。いずれも国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産登録を目指している。
書道は漢字の伝来やかなの発展とともに、伝統的な書法が確立した。鑑賞対象であるとともに、文字を学ぶ手本として庶民の生活にも浸透し、芸術性だけでなく生活文化の歴史の上でも価値が高いと評価された。
伝統的酒造りは、日本酒や焼酎、泡盛、みりんなどに使われるこうじ造りや発酵が主な技術。伝統的に培われてきた手作業が対象で、古くから日本に根差した食文化として重宝された。
近く答申通り告示され、登録されると技術継承などの活動に国の財政支援を受けられる。改正法では無形民俗文化財も登録制度の対象となり、高知県の「土佐節の製造技術」など2件が9月に登録された。
魅力再確認の機会に
(解説)
書道が無形文化財に登録されることは、筆が実用の文房具として生活に根付いていた時代が過ぎ去り、書道人口が減少していると指摘される状況の中で、書道の普及に取り組んでいる人々にとっては朗報だろう。日本の書家たちも、書道の普及に役立てようと、国連教育科学文化機構(ユネスコ)の無形文化遺産登録を目指し、2,015年に日本書道ユネスコ登録推進協議会を発足させ、21年8月には日本書道文化協会を設立するなど働き掛けを加速させてきた。
しかし、新型コロナウイルス禍で、書の展覧会の開催が困難となり、文房四宝(筆・墨・硯<すずり>・紙)の製造者や、対面での指導を主としてきた書を教える人たちの苦境が続いている。昨年、開催を見送った毎日書道展などの書展は今年から開催されたが、支援の輪はぜひ広がっていってほしい。
日本の現代書は独自の表現を生み出し、世界でもその多彩さが注目されている。今回の登録を機に、日本の生活文化の粋として脈々と伝えられてきた書の魅力が再確認され、新たな花を咲かせることを期待したい。{桐山正寿}
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